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大さん橋のデッキに立ち、心地よい海風に吹かれながら、視線の先に「キングの塔」と「クイーンの塔」を捉える。さらに目を凝らせば、その奥にわずかに「ジャックの塔」のシルエットが見える――そんな瞬間が、横浜の風景の中で私にとって特別なものです。横浜には古くから、この三つの塔を同時に見ることのできる特定の場所をすべて巡ると、願いが叶うという「横浜三塔物語」の都市伝説がまことしやかに囁かれています。

この伝説を聞くたびに、私の中でいつも浮かぶのは、その「願いが叶う」という部分への静かな懐疑です。もし本当に全ての願いが叶っていたなら、今頃私は世界の富を掌握する立場にでもいるかもしれませんね、と心の中で微笑んでしまいます。もちろん、それは単なる冗談ですが、この伝説が、人々にとって横浜を巡るささやかな楽しみの一つになっていることは間違いありません。
横浜三塔とは、神奈川県庁本庁舎(キングの塔)、横浜税関本関庁舎(クイーンの塔)、そして横浜市開港記念会館(ジャックの塔)の三つの歴史的建造物を指します。かつては周辺に高い建物が少なかったため、これらを同時に見るのは比較的容易だったようですが、約100年の時を経て、周辺には高層ビルが林立し、同時に三塔を視認することが難しくなりました。これが、伝説が生まれた一因とも言われています。
現在、この三塔を同時に見られるスポットとして広く知られているのは、赤レンガ倉庫、神奈川県庁と日本大通りを結ぶエリア、そして私がよく訪れる大さん橋国際客船ターミナルの三ヶ所です。それぞれの場所から、異なる角度で三塔を眺めることができるのは、港町横浜の奥行きを感じさせる体験です。
私自身は、願いが叶ったかどうかはさておき、大さん橋から何度も三塔を眺め、その歴史と現在の横浜が織りなす風景に、ただただ心を奪われてきました。みなとみらいの景観が織りなすロマンと歴史的建造物の重みが、横浜という街の魅力を一層深くしているように思います。

