’98甲子園は、常識の枠を大きく飛び越えた高校野球シミュレーションとして語り継がれている作品です。プレイステーション用に魔法株式会社が1998年に発売した本作は、前作までの流れを受け継ぎつつも、極端な自由度と奇抜な仕様によってシリーズの異端児と呼ばれるようになりました。
シリーズでは初めて主人公を作成し、入学から甲子園を目指す流れをストーリー仕立てで描いています。これにより、前作よりもドラマ性が増し、練習やイベントなど育成要素が充実しました。ミニゲーム形式で操作する練習モードは、当時としては珍しく、個々の選手を動かしながら能力を鍛える仕組みになっていた点が特徴です。
しかし、本作の真骨頂は「エディット」機能にあります。投球モーション、校旗、校歌まで自作できる仕様で、特に投球モーションは「3秒以内」「体の一部が地面についている」以外の制限がないという破格の自由度でした。結果として、宙返りしながら投げる投手や、踊りながら土下座する投手など、常軌を逸した動きが可能で、後年は動画サイトを中心に“バカゲー的名作”として再注目されました。
一方で、音響や応援BGMの質が前作より落ちている点や、キャッチャー視点の表示による見づらさなど、純粋な野球ゲームとしての完成度は賛否が分かれました。それでも、真面目にプレイすれば普通の高校野球ゲームとして成立しており、遊び方次第で印象が大きく変わる作品です。結果的に、「真面目に遊ぶか」「笑いの渦に飛び込むか」をプレイヤーに委ねた点が、長く語り継がれる理由になっています。
現在もシリーズファンの間では、“もっとも自由で、もっとも狂った甲子園”として記憶されており、エディット文化の先駆けとして見ても興味深いタイトルです。
なんとなく笑いたい夜にオススメの一本。