本格的な夏の気配とともに、冷たいものが恋しくなる時期です。巷にはキラキラと飾り付けられた、いわゆる「インスタ映え」するかき氷があふれています。それらは確かに美しいのですが、正直なところ、一杯1,000円を超える価格は、個人的には少々高いと感じてしまいます。そう口にするのは、なぜか世間では憚られる風潮があるようにも見えますね。
横浜の老舗「三光商会」が提供する氷の美学
そんな中で、横浜の街角、神奈川県横浜市西区西平沼町1-26、相鉄線平沼橋駅からはわずか徒歩1分の住宅街に佇む「株式会社三光商会」が提供するかき氷には、特別な価値を感じます。創業1952年という老舗の氷屋さんであり、単なるかき氷専門店ではない点が、まず心を惹きつけます。横浜の主要百貨店やホテルにも氷を卸しているという事実は、彼らが扱う氷の品質への信頼を裏付けるものです。
こちらのかき氷は、いわゆる「純氷」で作られているとのこと。その氷を削り出す技術は、まさに熟練の技と言えるでしょう。提供されるのは、イチゴやメロン、レモンといった定番のシロップをかけたかき氷で、ひとつ150円、ミルクをかければ200円という価格設定です。昨年までは100円だったという話も聞きますが、それでもこの価格でこの品質のかき氷が味わえるのは、現代においては稀有なことだと感じます。
飾らない素朴さがもたらす、確かな安心感
「三光商会」のかき氷が持つ魅力は、その飾らない素朴さに尽きます。煌びやかなトッピングや複雑な味のレイヤーはなく、純粋に氷とシロップが織りなすシンプルな美味しさが前面に出ています。特にミルクをかけると、氷の奥底にもミルクが忍ばせてあるという心遣いには、職人の温かみが感じられます。
このかき氷がもたらすのは、価格以上の満足感、そして何よりも安心感です。高額なデザートに対しては、どうしても「元を取らなければ」という意識が働くことがありますが、200円という価格であれば、そのような感情は一切抱きません。ただ純粋に、目の前にある冷たいデザートを何の気兼ねもなく楽しむことができます。
夏の暑さの中で、ふと立ち止まり、このような素朴なかき氷を口にする瞬間は、心身ともに満たされる感覚があります。それは、過剰な情報や物質に囲まれた現代において、私たちが無意識のうちに求めている、本質的な「癒やし」なのかもしれません。
この素朴さが良い
「三光商会」のかき氷は、派手さはないものの、その確かな品質と手頃な価格で、私たちの日常にささやかな、しかし確かな豊かさをもたらしてくれます。観光地の喧騒から少し離れた住宅街に位置する氷屋さんで、ひっそりと提供されるこのかき氷は、探求心を持つ者にとってはまさに「発見」の喜びを伴うでしょう。
私たちは、常に新しい刺激や特別な体験を追い求めがちですが、時には身近な場所にある、このような変わらない価値に目を向けることも重要です。このかき氷を味わうたびに、私は、本当に大切なものは、常に手の届くところにあるのかもしれない、と感じます。
この夏、もし平沼橋の駅を利用する機会があれば、お試しあれ。