2025年の春、株式市場は再び大きな動揺に見舞われています。きっかけは、米国と中国、さらには日本も巻き込んだ「相互関税ショック」。輸入品への報復関税の応酬が激化し、サプライチェーンに不透明感が広がったことで、企業収益の先行きに強い不安が生まれています。
これにより、3月下旬から日経平均は急落。特にグローバル展開を行っている製造業や素材関連、商社株の売りが目立ち、一部の銘柄では配当利回りが6%前後まで跳ね上がる異常事態となりました。
■ 高配当化の“罠”か“チャンス”か?
急落によって高配当銘柄となった銘柄は、一見割安に映ります。例えば、大手総合商社や電機系輸出企業の一部では、株価下落と前期ベースの配当維持見込みが重なり、見かけ上の利回りが非常に高くなっています。
しかし、ここで注意したいのは、その高配当が本当に維持されるのかという点です。2025年の業績見通しは、今なお不透明。輸出比率の高い企業は、今後の受注減や関税負担の増加によって減益・減配の可能性が高まっており、利回りだけで判断するのは非常にリスクが高い局面です。
■ 減配リスクが高まっているセクター
今回の関税ショックでは、とくに以下の業種で減配リスクが強まっています:
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商社:資源価格の変動+中国リスクのダブルパンチ
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自動車・部品:米国向け輸出の関税強化で収益悪化懸念
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電子部品・半導体装置:中国・ASEANへの出荷鈍化
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鉄鋼・非鉄:原料価格と販売価格のミスマッチが加速
配当利回りが高い=安定ではなく、将来の業績が見込めないから売られている結果としての高利回りという視点を忘れてはいけません。
■ それでも高配当株を狙うなら?
こうした状況下でも、国内需要中心・収益安定型の企業には相対的な安心感があります。食品、通信、インフラ、小売などのディフェンシブ銘柄は、外部環境の影響が比較的限定的で、減配のリスクも抑えられています。
また、長期的な視点で「配当利回り5%台で仕込める局面」と捉えれば、あえて下落時に拾っておく戦略もアリです。もちろん、業績・財務・配当方針の3点を丁寧に精査した上での判断が必須になります。
■ 最後に:高配当株は“逃げ場”ではなく“見極めの場”
株価が急落しているときこそ、配当を武器にした投資が注目されがちですが、2025年のような不確実性の高い相場では、「配当を維持する力のある企業」に厳選して資金を向ける姿勢が問われます。
利回りが高いという理由だけで飛びつくのではなく、その企業がこの難局をどう乗り越えるのか、過去の配当履歴や財務基盤をしっかり見てからでも遅くはありません。むしろ、今は“見かけの数字より本質”を見極める力が、投資家にとって何よりも大切なフェーズに差し掛かっています。