カナダ産映画『サイコ・ゴアマン』、これがまたクセが強い映画なんですよね。冒頭からエンドまで血みどろの展開が繰り出されるためスプラッタホラー、パニック系と思いきや、蓋を開けるとクズが寄ってたかってわちゃわちゃと喧嘩しているだけというお話。ダークでひねくれたユーモアが炸裂する、まさに“大人向け”な作品です。
この映画の要素は「酷い・えぐい・超笑える」に集約されています。
上映当時からアマプラ公開までの評価は一貫して高く、純粋な正義と悪の戦いが刺さらない人には絶対に見て欲しい。
物語の始まりは、主人公兄妹が偶然にも“地球征服を狙う悪魔=サイコゴアマン”を復活させてしまうところから。
「ヤバい悪魔がそんなところから何故出てきた」というツッコミから始まり、復活したサイコゴアマンは世界を破壊する力と意思を持っていながら、ある理由で予想外の展開に。
封印の解除を察知した正義の勢力(ガンダム00のスサノオみたいなデザインのコスプレババア)の参戦など色々あって、最終的には銀河の存亡を賭けた戦いが始まるのであった・・・。
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本作には全編を通して「三つ子の魂百まで」という諺ががっちり当てはまるキャラクターが目白押しとなっており、登場人物は全員、何があってもそのクズっぷりというか、生き方を改心させる気配がない点には妙なリアリズムを与えています。
キャラクターのセリフや行動の一つひとつがシュールで、笑いながらも背筋がゾワッとするシーンが目白押し。
実は、あの『チェンソーマン』の作者・藤本タツキ氏もこの映画を気に入っているそうで。言われてみれば、登場キャラの異常性とか、ブラックなユーモアのセンスとか、共通点を感じるんですよね。
「田中脊髄剣」の元ネタか?というシーンもあるので、必見です。
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ただ単純にド派手なアクション映画を期待すると、いい意味で裏切られる作品です。人生の苦みも甘みも知っている、少し疲れた大人こそ楽しめる――そんな作品じゃないかな、と思います。
ラストは大団円って感じで〆るかと思いきや、純然な被害者が救済されないままクローズアップされて何ともいえない後味にするセンスは流石です。(かわいそうなのに笑えるのがずるい)
ちょっと心にくさびを打ち込んで〆るスタンスは、名作の手法ですね。
ちなみに「サイコゴアマン」は造語ですが、意味を充てるなら「狂気のちみどろ男」です。。。